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セルバのブログ: よるみちセルバ

2007年12月07日:よるみちセルバ

【 花咲くうた -八文字屋- 】

 
 
大学では日本文学を専攻した。
卒論では遠藤周作の『沈黙』について書いた。
だから、ごくごく さらっと、一般的なことしか
勉強しなかったのだが、卒業してからは短歌や
俳句に興味をもつようになり、句集や歌集を
よく手に取るようになった。
 
hanasakuuta.jpg
  
  
  
  
   
   
   
   
     
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
出がけに買ったのは、『花咲くうた』。
俵万智さんの、‘三十一文字のパレット’の3作目になる。
いろいろな歌人の短歌を紹介しているものだ。
 
その日は時間があったので、SELVAをゆっくり
散歩がてら歩き泉中央から地下鉄に乗った。
仙台駅で下車し、スターバックスで、待ち合わせの
時刻まで時間を過ごした。
 
元・恋人との別離のあと、気持ちが内側に向きがちで
意識して 前を、そして外を向こうと頑張っている。
異業種交流を兼ねて、それまで二人で過ごしたことの
ない人との時間を持とうと、何人かと会った。
でも、正直なところ それが何かにプラスに作用する日が
くるのかすら判らずに、いる。
否、きっと何かにプラスになるはずなのだが。
 
会うまでは「新しい恋をするかもしれない」と淡く
期待して行くのだが、結局のところ、容姿とか
洋服や食べ物の好みとか 休日の過ごし方とか
話し方や 私の名前を呼ぶ声なんかが気に入らなくて
小さく心の中で舌打ちしながら帰るのが常だ。
  
我が儘で身の程知らずとは解っているのだが、
やはり元・恋人と較べてしまう。
時おり 元・恋人からは連絡があって、お互いの
今の状況を探り合うような会話をして、電話を切る。
もう戻れないことを2人とも噛みしめながら。
そんな電話が、もう5回以上。

 
 
温かいラテに口をつけながら、時計代わりの
携帯電話を ちらちら見て、本を片手に
待ち合わせの時刻を待つ。
あと20分 経ったら、席を立とう。
すこし早めに待ち合わせ場所にいて、笑顔で
彼を迎えることにしよう。
 
視線を本の頁に落とすと、携帯電話が小さく震えた。
今日の待ち合わせの相手からのメールだった。
 
「急に仕事が長引いた。19時までに行くのは
厳しい状況。また連絡します。ごめん。」
 
 
仕事だったら仕方がないよ、そっちを優先して。
と返信して、また ラテに口をつける。
 
 
彼は麻酔科医で、私より ひとつ年上だ。
  
お医者さんなんだ すごいね、勉強してそうだね、
と 当たり障りなく言ったら、
「でも麻酔科だからさ、ほかのお医者さんと違って、
 お腹が痛いんだけど何の病気でしょうとか
 訊かれても、一般的なことは判るけど、あんまり
 詳しく言ってあげられないんだよね。
 格好いい医者じゃないんだ。」
と答えた。
 
健康体で、手術をしたことは これまで無いから、
麻酔科医という職業が、どんなものなのか 私には
想像もつかないが、そういう物言いに、なんとなく
好感がもてた。
乗っている車も 普通の国産車で、「勤務医なんて
こんなもんだよ、別に金持ちじゃないんだ」と
笑って言えるところに がつがつしない 余裕を感じた。
 
その後 しばらく待ったが、右手の薬指の先のマニキュアが
剥げかけているのが気になって、そのまま店を出て、
地下鉄に乗って帰った。
玄関のドアのロックを解錠しようとデジタルキーの蓋を
開けたら、またメールが届く。
 
 
「こっちから誘っておいて悪いんだけど、日を改めてほしい。」
 
 
こういう時、もし 相手との関係が深かったり、すごく
会いたい相手だと感じているのなら、腹が立ったり
会えなくて寂しいとか思うんだろうな、と冷静に考える。
部屋の電気を点け、寒い部屋でコートを着たまま座り込んで、
丁寧にマニキュアを落とし、また同じ色を塗り直す。
 
 
特に観たいテレビもなく、することもなく、ベッドで
横になって布団を被っていると、携帯電話の着信音が鳴った。
 
 
「もしもし、今日、ごめん。もう寝ていた?」
 
 うん、ちょっと横になっていた。
 
「緊急で手術が入って、思ったより時間が かかって。
ようやく帰れると思ったら、また臨時の手術で。」
 
 そう、お疲れさま。大変だったのね。
 
「うん、でも‘仕事を優先して’ってメール貰えたのが
ちょっと励みになったよ。この埋め合わせは必ずする。
いつが いい?」 
 
 ごめん、ベッドから出て手帳を見るのが面倒だから
 確認して、連絡するね。
 
「わかった。今日ほんと ごめん。おやすみ。」
 
 
 
ふと、思う。
元・恋人に、私も彼と同じことをしていた。
  
もちろん それは仕方のないことで、腹を立てられても
言い訳の仕様がないことだし、社会人として ある程度の
責任を持てば、仕事を優先させるのは当然だ。
大事なのは、その後のフォローなのだ。
彼のように、疲れていても私はきちんとごめんなさいを
言えていただろうか。 口癖のように 言っていた
会えなくたって仕方ないじゃない仕事なんだから!
という自分の声が、耳の中でこだまする。
そして、元・恋人が同じ状況にある時に私は、やさしく
それを赦せていただろうか。
 
 
別れてから、まる1ヶ月以上が経つというのに、時々
こうして考えても仕方のない事に思いを廻らせる夜がある。
 
 
忘れたい/忘れたいとか/忘れられないとか思う/自分のことを
                                  佐藤真由美
   
この本に載っていた短歌だ。
  
短い言葉だからこそ、ずしりと胸にくる。
ほろ苦い共感が 自分を苦しめる。 
 
 
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■

《 八文字屋 》 5階

花咲くうた   1365円
三十一文字のパレット③
 
 
著者の俵万智さんは 現在なんと仙台市在住です!
 
 
********************* 
  
SELVAのHP上で新しいコミュニティが
誕生しましたね。
blogの数も ぐっと増えて、合計4人の
bloggerでお送りします。
新bloggerの3名の皆サマ、どうぞよろしく
お願い致します。
そして、読んでくださる皆サマも、ぜひ
「セルバひろばメンバー」として たくさん
コメントをお寄せ頂けるとありがたいです。

コメント(7)

はじめまして。
こちらこそどうぞよろしくお願い致します。
今回のきっかけになったのは、よるみちさんのブログを見て 
よし!私も新しい事はじめよう!
と思ったからなんです。

私が、こんなこと言うの大変おこがましいのですが、よるみちさんのブログは表現力がケタはずれに素晴らしい!

憧れです・・・。
これからも、頑張ってください。

■sharemonoさん■
こちらこそ、よろしく
お願い致します。
それから、お褒め頂き
ありがとうございました。
表現力は・・・まだまだ
勉強の身です。
4人一緒に、頑張って
いきましょうね♪

いつも楽しく拝見します。
こちらのブログを拝見して思い出したことがあります。
今年の夏に俵さんの講演を聴きに旭ヶ丘の青年文化センターへ行ってきました。そこで俵さんが最近仙台へ引っ越してきたとおっしゃってました。(何かゆかりがあるそうです。)皆さんご存知でしたら恥ずかしいですが。。。
その時に同センターの駐車場が満車ですっごい遠くに止めて走ったことを思い出しちゃいました。何がきっかけで思い出すか分かりませんね。また、よろしくお願いいたします♪

ご挨拶遅れました。5人目のブロガーちびづれです。よろしくお願いします。
私小説風ブログ、すてきです。
ご自身も洗練された女性なんでしょうね~
妄想が膨らみます…
よるみちさんの今後が気になります。

■もぐもぐさん■
せっかくコメント頂いたのにお返事が遅れましてすみません。
俵万智さんのお父様が東北大学で教鞭を執っていらしたことがあったらしく、その縁と お子さんの教育について考えた結果 仙台にいらしたと何かで読んだ気がします。
青年文化センターでの講演会、行きたかったです。文学館あたりで俵万智さんの講演会か短歌の勉強会みたいなもの、何かないかなぁと期待しつつ市政だよりを読んでいるのですが・・・なかなか無さそうですね。


■chibidureさん■
いえいえ、こちらこそご挨拶が遅れまして、すみません。
仕事のせいにばかりしていてイケナイと思いつつも、また仕事が多忙の極みで更新が滞ってしまいました。いっしょにblog頑張りましょうと言いたいところですが、よるみちオマエが頑張れよというのが実状ですね。はい、頑張ります。

初めまして。
いつも素敵な日本語を連ねて表現されているなと憧れておりました。
以前私も悲しい出来事があり、その比重に耐えられなくなり、身動きすることさえ奪われた時期がありました。
そんなときに、大先輩から言われた言葉が
「時間という名医が貴女を治してくれるよ」
この一言で救われて現在に至っております。
よるみちさんの素敵な時間をこれからもお聞かせ願います。

■sugarさん■
初めまして。コメント、ありがとうございます。

「時間という名医」、名言ですね。
確かに、失恋直後より心は だいぶラクになってきています。
ほんとうに傷が癒えるまでは まだ時間がかかるのだろうと思いますが、こうして
応援してくださる方がいるのだと思うと、励まされます。

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