2007年05月13日:生活の一片
母の日に
今日は、母の日。
2週間ほど前から、お母さんへのプレゼント商戦が
始まっていた。
いつも感謝しているけれど、恥ずかしくてその思いを
なかなか伝える機会がないから、こういう日は とても
ありがたい。 でも、なんだか母の日も、
「プレゼントをあげることが感謝の気持ちを表すこと」
みたいに扱われていないだろうか。
物質至上社会の側面が、こういうところにも表れて
いるような気がしてならない。
今は どうなのかわからないけれど、私が小学生の頃は
母の日の前日の土曜日(当時は土曜日も授業があった)に
赤いカーネーションの造花に「お母さんありがとう」と
細い短冊がついたブローチが配られた。
お母さんに渡すように、と。
まだ幼かった母の日の前日、確かまだ1年生で、初めて
その造花を渡した日の母の言葉や何やら感慨深げな表情を、
私は今も覚えている。
「赤いカーネーションね。 お母さんがいない人は白い
カーネーションをもつのよね」
当時は、へぇそうなんだ、という程度でしかなかった母の
言葉だけれど、今は そんなふうに通り過ぎることができない。
母は 16の時に母親(私からは祖母にあたる)を亡くした。
若いときから病気がちだったという母の母に代わって、
母は祖母(私からは曾祖母にあたる)に育てられた。それで
母は ずいぶん寂しい思いをしたこともあったという。
継母との関係も良くなくて、高校進学時から東京に出て
下宿生活を送った母は、その後も東京で働き、父と出会って
「普通の家庭」というもののイメージを持てないまま、結婚した。
舅姑(私の父方の祖父母)は、そんな母を、片親に育てられた
という、ただそれだけのことで執拗にいじめた。
父の不在時に行われるそれは、幼い私から見ても、ひどく陰湿で
母が泣き顔を隠そうとするのを見るたびに、何もしてあげられない
自分が悲しかった。
その後、私が高校受験のときに祖父は亡くなり、祖母も
年老いて、気弱になった。
母は、当時のことを忘れてしまったかのように振る舞い、
毎日 父の会社を朝から晩まで手伝っている その合間に
庭の草むしりをしてやり、犬の散歩をしてやり、祖母が病院に
行くといえば車で送る。
そして祖母は、事あるごとに母に「私はあんたをほんとうの娘のように
思っているから、私が倒れたり足腰が立たなくなったら頼むよ」なんて
都合の良いことを言っているのだから、見ている私としては何とも
複雑な気分だ。
そういえば私が16歳になった時、母は、「私はね、あなたが
結婚して子どもが生まれたら うんと手伝ってあげる。だから どんな
ことがあっても長生きしなきゃって思っているの。」と明るく言った。
その言葉から、母が、実母が早くに亡くなったことでどれだけ
寂しい思いや辛い気持ちを味わったかが推測できる。
そして、娘にはそんな気持ちを味わわずに幸せな気持ちで母親に
なって欲しいと切実に願う母の背中は、あの頃よりずっと小さくなった。
だから 私は時々、母の前では、30を過ぎても こうして
一人でいることがすこしだけ申し訳ない気持ちになる。
ほかの誰に対しても面倒をかけずに自活しているつもりだけれど
母には 娘の結婚を祝う気持ちや孫を抱くあたたかさを
知らせてあげていないことが、申し訳なく思うのだ。
今日は、ひたすら母を思って過ごす。
すぐ近くに住んでいるのに、母の日だからと言って顔を
見に行くのが 何だか気恥ずかしい不良娘だ。
母の日なんて忘れたふりで、いつもの日曜日のように
電話をかけて終わりにしたい。
高血圧に悩む母へのプレゼントは、忘れた頃に渡すつもりで
クロゼットの中に隠している。
〔今日のBGM / ヨイトマケの唄〕
丸山明宏 作詞・作曲
唄 桑田佳祐
今も聞こえる ヨイトマケの唄
今も聞こえる あの子守唄
工事現場の昼休み
たばこふかして 目を閉じりゃ
聞こえてくるよ あの唄が
働く土方の あの唄が
貧しい土方の あの唄が
子供の頃に小学校で
ヨイトマケの子供 きたない子供と
いじめぬかれて はやされて
くやし涙に暮れながら
泣いて帰った道すがら
母ちゃんの働くとこを見た
母ちゃんの働くとこを見た
姉さんかぶりで 泥にまみれて
日にやけながら 汗を流して
男に混じって ツナを引き
天に向かって 声をあげて
力の限り 唄ってた
母ちゃんの働くとこを見た
母ちゃんの働くとこを見た
なぐさめてもらおう 抱いてもらおうと
息をはずませ 帰ってはきたが
母ちゃんの姿 見たときに
泣いた涙も忘れ果て
帰って行ったよ 学校へ
勉強するよと言いながら
勉強するよと言いながら
あれから何年経ったことだろう
高校も出たし大学も出た
今じゃ機械の世の中で
おまけに僕はエンジニア
苦労苦労で死んでった
母ちゃん見てくれ この姿
母ちゃん見てくれ この姿
何度か僕もぐれかけたけど
やくざな道は踏まずに済んだ
どんなきれいな唄よりも
どんなきれいな声よりも
僕を励ましなぐさめた
母ちゃんの唄こそ 世界一
母ちゃんの唄こそ 世界一
今も聞こえる ヨイトマケの唄
今も聞こえる あの子守唄
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
この歌は、桑田佳祐のアルバム『TOP OF THE POPS』に
収録されています。2002年11月27日発売。

この歌を聴くと、あぁ いつの時代も‘お母さん’って、同じ
なんだなぁと感じます。
誰だってお母さんがいなきゃ生まれてこられないし、
どんな境涯にあったって、子どもを思わないお母さんは
いないんだなぁ、と。
もともとは美輪明宏さんの作詞作曲・唄でヒットしましたが
放送禁止用語が含まれているということで、テレビやラジオでは
なかなか聞くことができなくなりました。
興味のある方は、5階‘八文字屋書店’のCDコーナーで
訊いてみてください。
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